2017年6月14日水曜日

平成29年度 第2回 北方四島交流訪問事業(一般:択捉島)⑥

2017年6月8日-11日
択捉島のビザなし訪問に参加して(つづき)

ホームビジッドのあとは、別飛の「金魚幼稚園」の視察に向かいます
紗那のまちを離れると、舗装されていない砂利道に入ります
ただし、そこも舗装化の工事が始められようとしている様子でした
園長先生の説明によると、クリル経済発展プログラムの一環として、2011年に建設されたそうです。幼稚園建設の背景には村の出生率の上昇があります
なるほど、確かにこの別飛の村中でも子どもたちの姿を多く見かけます
人口は少ないですが、日本の過疎地域と少し様子が違います
この金魚幼稚園の設立により25名の児童と教師が島に移り住んできたとのことで、現在は61名の児童が在籍しています
1歳半~3才、3歳~5歳、5歳~7歳のクラスに分かれているそうです
 この日は視察予定時間が大幅に遅れたたため園内の見学は出来なかったものの、ついこの間に終わったばかりという卒園式で披露したお遊戯を拝見しました
衣装や舞台の飾りつけ、先生がたも参加してのお遊戯です
最年長組だと思いますが正直、いや気合入りすぎではないでしょうか…
少し気になったのですが、幼稚園の玄関のコンクリートが割れています
私は素人なので勝手なことを断言できませんが、外見はとてもきれいなのですが、5-6年前の建物の割には粗雑な建築のように思えます
建築技術が十分な水準を満たしていない、あるいは検査なども日本と比較して十分な体制で行われていないのではないかと、ある訪問団の方は感想を述べていました
さて幼稚園の見学のあとは、紗那のまちにもどって散策です
実は昨日の時点では、ギドロストロイ社の水産加工場とふ化場の視察が予定に入っていました
ところが当日、説明できる担当者がいないということで中止になってしまいました、残念
ギドロストロイ社が収める税金は択捉島の税収の70%を収めると聞きました
また島民の多くも関連産業を含めてギドロストロイと何らかの関りがあるとのことです
今回、訪問団に参加していた水産加工業の社長さんも、この視察を期待していただけにガッカリしていた様子でした
下の写真は舗装化の工事中と思われる道路。
子どもたちの姿を多く見かけました
紗那の街中の散策します
現在の紗那のメインストリートは高台に置かれ、商店が立ち並んでいます
外国の風景のようです
お店には韓国製の商品がとても多いように見えました
古い四輪駆動車は日本製の車が多いのですが、そのほかに町中を走っている自動車では特に韓国製がとても多く使われていたと別な訪問団の方が話されていました
このメインストリートの一角に日本が建てた測候所があります
岩崎氏によると、この建物はしばらくの間、ロシアに地震観測研究所として利用されていたが、現在は閉鎖されています
元島民の方に教えていただかなければ気づかずに通り過ぎてしまうところでした
日本人が暮らしていたのは、現在の高台のメインストリートから見下ろす低地です
風がつよく当時は高台には、測候所があるくらいで住居を建てていなかったそうです
真ん中の赤い屋根と青い屋根の建物が地区行政府と芸術学校です
文化会館が建てられる前は集会所としても利用していたそうです
岩崎氏は日本人が暮らしていた集落の跡地がどうなっているか気になっていたが、時間がないため、近くまで行けなかった、と残念そうでした
その後の交流会では、ロシアの歌と踊り、そして日本側の訪問団は「ふるさと」をみんなで合唱しながら交流をふかめました
帰りの「はしけ」
エトピリカと散布山
翌日に根室港に到着
またしても雨の中、多くの方が出迎えてくださいました
今回参加し、はじめてまじかに見る島の姿やロシアの方との交流でした
根室市に暮らしていて、知識として読んだり聞いたりしてはいても、実際に体験することが本当に大切なことと改めて感じました
また船の中や現地などで、元島民の方や様々な立場の方から、いろいろなお話を聞かせていただいたことも大変勉強になりました

元島民の方はホームビジッド先で、自分が暮らしていた土地の近所に住んでいた方とお会いすることが出来た。今回の訪問で目標としていた新しい友達をつくることができた、とよろこびました。

志発島の元島民2世と3世で参加された親子の方は、お二人とも教師とのことですが、島への訪問ふくめの返還運動に参加することに対し、現在の職場が大変に理解をしてくれていることをお話しされました。
また昨年、墓参や自由訪問でロシア人側の都合で中止等が相次ぎましたが、その方が参加された墓参(自由訪問?)のときも、出港してからも四島側と手続きのやり取りが続いており、国後島の古釜布を経った後も、2度3度状況が変わって、島に上陸できるか、このまま根室に戻るのかという緊迫した事態になっていた様子を話してくださいました
そのときは結果として島に上陸することが出来たそうですが、上陸が決定した時の恒例となった元島民の方の表情が忘れられない、と言います

歴史・文化の専門家交流で参加された方は、紗那周辺の択捉島の遺跡調査をおこなったものの、今回は1日日程となったため大変にきつい状況だったこと。それでも縄文時代(?)の遺跡を発見することができたことをお話されていました
私がすごいですねと言うと、島には遺跡はなんぼでもあって、1日に5-6か所発見されることもある、と言われました。ただしこの次に択捉島にわたることができるのは来年だそうです。本当はもっとじっくり時間をかけて調査をしたい、とお話されていました
また開発が進むことでそうした貴重な遺跡が損なわれることを危惧されていました
本当の意味で自由な訪問が出来る状況になることが、こうした学術研究の分野からも期待されています

今回の訪問では、それぞれの方が、いろいろな思いをもって島への訪問をおこなっていることを、教えていただきました

領土問題の啓発という観点からも、ぜひできるだけ多くの方がこのように訪問できる状況になることが必要と考えます
またビザなし訪問では参加者それぞれの知識や理解に差があるため、事前や舩中の研修をさらに充実させていくこと
そして参加者同士のグループワークなどでしっかりとお互いに感じたことや意見を述べ合い、認識を高めていくような取り組みも必要と思いました

今回参加させていただいて、ありがとうございました
この経験を今後の活動にもしっかりと活かしていきたいと思います

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