2024年9月11日
根室市議会9月定例月議会で一般質問を行いました
その質問内容と答弁を要約してお知らせします(おわり)
3.根室市内の学校等におけるキャリア教育について
(1)現状の取り組みについて
島根県益田市、山口県萩市を視察した。具体的な取り組み内容はそれぞれ異なるが、双方に共通する考え方として「ライフキャリア」の視点から、幼児期~青年期にかけて系統的な活動テーマをもち、学校ごとやの個別のカリキュラムだけでなく、市全体として共通した目標を掲げ事業化して取り組んでいることが特徴であった。
文部科学省のホームページから引用すると「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」。
学習指導要領にもとづき、その内容や目標の設定、あるいは指導内容は学校ごとに地域や子ども達の実情に応じて組み立てられるものと認識しておりますが、あらためて根室市内の各学校において、これまでキャリア教育がどのような形で取り組まれているのか。
【教育長 答弁】
国が示している「キャリア教育」で育成すべき力として、
他者を理解し、協働する「人間関係形成・社会形成能力」、
主体的に行動し、今後の成長のために進んで学ぼうとする「自己理解・自己管理能力」、
様々な課題を発見・分析し、適切な計画を立ててその課題を処理、解決する「課題対応能力」、
働くことの意義を理解し、多様な生き方に関する様々な情報を取捨選択・活用しながら、自ら主体的に判断していく「キャリアプランニング能力」など、
これら四つの能力からなる「基礎的・汎用能力」を掲げており、各学校において学校や地域の特色、子どもの特性や発達段階を考慮し身に付けさせていくもの。
根室市内の学校は、これまでインクルーシブ教育を進め、児童生徒一人ひとりが自分に最もふさわしい学び方を自ら選択し、試行錯誤を重ねながら達成感を味わうことができる学習指導を推進する中で、自己理解や課題に対応する能力を培うとともに、多様な立場の意見を尊重しながら交流し、受容し合う学習活動の中で、人間関係形成・社会形成能力を培うほか、小中学校の発達段階を踏まえた職場見学や職場体験等を通してキャリアプランニング能力の育成に努めてきており、キャリア教育の視点も取り入れた教育を推進してきた。
(2)ライフキャリアの視点からのキャリア教育について
根室市でもこの間コミュニティスクールの設立により、地域との連携を促進する枠組みをつくり、またこれまで幼保小中高の連携のあり方についても模索してきたと聞く。
乳児期、高校、青年期以降まで含めて体系的に、ライフキャリアの視点から地域で根室の子ども達を育てて行く取り組みについて、教育長の考えを伺う。
【教育長 答弁】
今年2月に実施した「社会教育とまちづくり講演会」では、
地域の大人が対話の機会を届ける「中学校カタリ場」、
地域で働く大人と語る「高校カタリ場」、
高校生が先輩としてロールモデルとなる「小学校カタリ場」など、
ライフキャリアの視点を取り入れた全国の先進事例が紹介。
地域の中で意図的に出会いの場をつくり、関係性を構築しながら地域活性化につながる取組として大変興味を寄せている。
また講演会に参加した市民や高校生からは、根室市でも「カタリ場」を「自分達で作ってみたい」との声が上がり、これが高校生による自主的な小中学生との学習会開催へつながるなど好事例も出始めており、これらの主体的な活動を後押ししながら、根室市としてのキャリア教育の充実に努めたい。
【再質問】
いわゆる「キャリア教育」は、「インクルーシブ教育」との関わりの中で、根室のキャリア教育もいっそうの厚みを持たせることが出来たしてきたという趣旨の答弁。
学校教育課程の中で、社会人として働く人として自立するために「基礎的・汎用的な能力」を身に着け、「勤労観」や「職業観」に対する意識を育てることを目的としている。
各地での様々な取り組みがあり、過去に須崎議員も秋田県大館市の「ふるさとキャリア教育」など取り組みの充実についての一般質問をされていたところ。
益田市が「ライフキャリア教育」という名称で実践している手法のひとつである「カタリ場」は、地域の中にどのような人がいて、その人がどんな思いで過ごしてきたのかを率直に語り合うことで子どもも大人も双方に学び成長する。家族やごく一部の身近な大人という枠を超えて、しかしどこか知らない土地の偉い人の話ではなく、益田市という一定の大きな枠組みの中で交流し、「この地域で将来を過ごす」「どのように育っていくのか」という人生観を養う教育と説明されていた。
昔は家族や町内会等をはじめとした地域の中で子育てし、あるいは社会教育の分野で実践されてきた。これを学校教育の課程の中に合体させたことに驚いた。全市であり学校ごとの取り組みだけでは実現が難しく、教育委員会の主導のもとで進められてきた。
これまで郷土学習や職業体験をはじめ学校ごとに特色ある活動が行われてきたが、そうした活動に加えて、この益田市のように全市的に統一した取り組み、事業を根室市でも実施していくことが可能なのかどうか? あらためて教育長の考えを伺いたい。
【教育長 答弁】
「カタリ場」の取り組みは多様な人々が出合い、語り、学び、出会うことから社会に居場所と出番を作る活動として着目されている。益田市はそれぞれの世代ごとに区分して全市的に取り組みを行っている。
益田市の取り組みのきっかけは、「高校を卒業して町を出ていく子ども達が、この町には何も魅力が無い」という声を聞いた大人たちが「俺たちの魅力、生き様を伝えたい」という熱い思いからはじまったと聞いている。そのことが地域の活性化、Iターン・Uターンにつながっている。
持続可能な取り組みとしていくためにはエネルギーが必要であり、形式的にすすめてもうまくいかないと思う。根室市では高校生による自発的な学習会や各学校やコミュニティスクール活動でもカタリ場のような取り組みを出来ないかという声が上がり始めている。こうした取り組みを後押しし、活動を広げていきたい。
【再質問】
コミュニティスクールは立ち上げたが、地域学校共同活動はまだ根室では発展途上にあり、広げていきたいという話だったと思う。
歯舞、落石、海星、そして市街地の学校はそれぞれ学校ごとの特色ある取り組み、逆に言うと(学校ごとの)取り組みの濃淡があるように思う。
また社会教育として行ってきた「なるほど ザ・ネ~ムロ」の取り組み等は優れた実践だと思うが、全校生徒が参加できるわけではなく、結果として参加できる子ども達は限られている。「こどもの貧困」の中で語られる、いわゆる「体験格差」という言葉があるが、地域ごと学校ごとによって、そういった体験をした子とそうでない子によって、その後の成長に関わるような大きな経験をする機会が分かれる。
決して上からの押し付けではなく、自発的な発達をどうやって支援していくのか。今後もしっかりと研究をしていかなければならない。事例として紹介して頂いた高校生の取り組みも素晴らしいと思う。出来れば多くの子ども達が参加できるような仕掛け、自発的と言いつつも勝手には育たない。その仕掛けを教育委員会が主導するのか、別なアプローチが良いのか、私たちも含めて考えていきたい。
【教育長 答弁】
子ども達の経験、体験をどう豊かにしていくかという点だが、小学校では職場見学、中学校では職場体験をおこなってきた。従来は職業について知るということを主眼に行われてきた。各学校にはその仕事を進めている「大人の思い」を受け取ってくるような学習をしてほしいとお願いしている。
郷土学習として郷土の自然、歴史、文化に理解を深める学習では子ども達は戻ってこない。人のエネルギーや思いに触れた子ども達が地元に戻ってくる分析もある。そうした豊かな交流が出来るような体験を仕掛けていきたい。
10月8日の東大の牧野先生の講演会は、今回は講演に加えて、社会教育委員と地域で活動している方、高校生が壇上で豊かな社会をどうつくるのかパネルディスカッションを行う。体育館の市民委員会にも高校生が入っている。いろいろな形で世代間の意見交流が出来るよう考えていきたいのでご支援をいただきたい。
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2024年7月2日 島根県益田市への視察風景(益田市議会の議場) |