5.教育について
(1)「新教育長」制度と教育委員会の役割について
( 橋本 質問 )
2015年に施行された地方教育行政法改正のもと、新たな制度における教育長が根室市でも誕生した。教育委員会は戦後、住民自治の組織としてスタートし、住民を代表する各教育委員で構成する教育委員会が首長から独立した執行機関として、教育行政を指揮、監督する役割を担ってきた、とされている。
その目的は、1956年に廃止された教育委員会法「第1条 この法律は教育が不当な支配に屈することなく、国民全体に対し、直接に責任を負って行われるべきであるという自覚のもとに、公正な民意により地方の実情に即した教育行政を行うために教育委員会を設け、教育本来の目的を達成することを目的とする」となっている。
このたびの法改正は、特に首長が任命する新教育長制度、首長による教育大綱の制定、総合教育会議の3点においては、明らかに教育に対する政治介入を強めたいという政府の意図が当時あった。そうした介入のきっかけを許してしまった背景には、大津市で起きたいじめ自殺の隠蔽を含め、これまでの教育委員会のあり方に対し、全国的に国民からの不信があったことも大きな要因。それでも、国会などさまざまな議論の中において、教育行政の民主化、地方分権、教育と教育行政の自主性の確保という3つの原則は変わらないことが確認されている。
したがって、こうした理念をもとに、より豊かな運営を目指していくことが、あらためて求められているものと考える。
今回の制度改正により、教育委員会のもとで補助機関として事務を執行する役割だった教育長が、教育委員長と合体することでその権限が大きく拡大され名実ともにこれまでの立場が逆転した。あらためて新教育長としての役割、そして今後の根室市教育委員会が目指す方向性について、教育長の見解を伺う。
( 教育長 答弁 )
地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正が平成26年6月に行われ、平成27年4月の施行により、教育委員会制度が大きく変わった。
改正法では、教育委員会の代表である教育委員長と事務の統括者である教育長を新教育長に一本化するとともに、これまで教育委員会が委員の中から選任していた教育長を、市長が議会の同意を得て直接任命する。当市では私の旧教育長としての任期終了に伴い、10月12日に議会の同意をうけ、11月1日に私が新教育長として任命された。
新しい制度の教育長としての役割は、教育委員会の会務を総理し、教育委員会の代表者として、教育委員会の会議の主催、具体的な事務執行の責任、更には事務局の指揮監督など、教育行政の第一義的な責任者としての役割を担うものとされている。
今後も、同じく地方教育行政制度の体制により設置された総合教育会議により、市長と教育政策の方向性を共有しながら、政策目標である個性を伸ばし豊かな心と感性を育むまちの実現を目指し、市民一人ひとりが生涯を通じて学び、活躍できるまちの具現化に向けて、教育委員会及び教育長としての職責を果たす。
( 橋本 再質問 )
地方教育行政法が改正された当時は、一部、国のほうでは、教育委員会制度そのものを廃止しようという議論もされていたが、さまざまな国会等の議論を経て、制度として残り、執行機関としての職務権限もそのまま残っていることは本当に大きなこと。
首長と対等に対峙し、また大きな権限と責任が集中した教育長に対し、しっかりとチェックを行う教育委員会、とりわけ個々の各教育委員に求められる役割というものも大きくなっている。
2014年7月17日の文科省で通知の中で、教育委員会の留意事項として、委員による教育長のチェック機能の強化、会議の透明性、委員の責任と資質、能力の向上が求められている。また教育委員会における審議を活性化し、地域住民の民意を充分に反映するための取り組みについても指摘がされている。
根室市の教育委員会としても、これまでの状況を振り返りながら、今後、根室市教育委員会として更に取り組んでいきたい課題についてうかがう。
( 教育長 再答弁 )
根室市における教育行政の諸課題は、規則制定、その他の重要案件は法令にのっとり、教育委員会の会議に諮り、御判断をいただいている。そのほかにもこうした会議の場のみにとどまらず、必要に応じて、各種の案件について委員の皆様から指導、助言をいただいてきた。
今後ともこれまで同様、委員の皆様との連携・協力に努め、新制度の移行により教育長が新たに会議の主催者となることを機に、さらに一層委員の皆様が活発に議論し、適切な意思決定を行えるよう、会議の運営に努めてまいりたい。
これまでに引き続き、管内教委連や北海道都市教委連などが開催する教育委員研修への各委員の積極的な参加を図るなど、委員の資質、能力の向上に努め、学校など各種教育機関への訪問等により、教育現場の状況把握、実情把握の機会の確保に努め、教育委員会の意思決定に地域の実態が一層反映できるよう工夫する。
また、住民が傍聴しやすい会議の公開などに配慮し、会議の透明性に努め、さらなる教育委員会の活性化を心がける。
(2)首長と教育行政の関係について。
( 橋本 質問 )
今回の市長の所信表明では、従来よりも教育行政に対し、かなり踏み込んだ形の意見を述べられている。前述の新教育長制度及びこれまで行われてきた総合教育会議の開催、教育大綱の制定を含め、市長として教育委員会とどのような関係性を築きながら今後の教育行政の推進を図っていこうとされているか、市長の見解を伺う。
( 市長 答弁 )
平成27年4月に総合教育会議を設置して以来、これまで4回の会議を開催し、教育に関する大綱やいじめ防止方針の策定をはじめ、児童・生徒の学力問題、教職員の体制などに関する協議、調整を行うなど、教育政策の方向性を共有しながら教育行政の推進にあたった。2017年11月より教育委員長と教育長を一本化した新教育長となり、より一層の連携強化を図る必要があることから、このたびの所信表明において教育文化の振興を政策目標の一つに掲げ、教育予算の確保をはじめ、学校教育の充実、キャリア教育の推進、多様な生涯学習機会の提供など、教育委員会と連携した取り組みを進めていくとした。
教育行政の推進に当たっては、教育の政治的中立性、継続性、安定性を尊重しつつ、教育政策の方向性を共有しながら、総合教育会議において協議を重ねるなど、教育委員会と充分に連携をし、取り進めていく。
(3)社会教育、文化・スポーツ振興について
地域の自立的発展を進めていく上で、社会教育分野における専門職種の体制の充実について、これまでも議会議論がされてきた。現状の到達点と新年度に向け、どのような観点からの職員配置を構想し、取り組んでいくのか、市長、教育長、それぞれの見解を伺う。
( 市長 答弁 )
生涯学習や地域コミュニティづくりの推進において、中核的な役割を担う社会教育主事などの専門職種の体制充実は重要であると認識をしており、これまでも市の求める人材として職員採用試験募集要項に明記をするなど、人材の確保に努めてきたところ。
本年度、社会体育課は専門性を持った職員を配置したところだが、社会教育主事は結果として人材確保に至っていない状況にあり、引き続き、人材確保に努め、資格取得など教育委員会と連携しながら、その体制整備に向けて取り組む。
( 教育長 答弁 )
社会教育分野の専門職種にかかわる配置の現状につきましては、社会体育課においては、平成29年度末に退職した専門職の後任に、スポーツに精通し、指導を行える職員の配置となった。一方社会教育主事の配置は、昨年度は5名を各社会教育施設に配置していたが現在4名となっている状況。
地域住民が文化、スポーツ活動を円滑に実施し、更に主体的に活動していくためには、社会教育行政の中核的な役割を担うこれらの専門職種の体制の充実が重要であることは、教育委員会としても認識しており、昨年度においても、市関係部署に対し、配置に向け要望していたが、人材が確保できず、結果として配置までには至らなかったところ。教育委員会としては、平成31年度の体制整備に向け、社会教育主事の配置について、市関係部署と引き続き協議し、発令資格を有する職員の採用など、計画的な職員配置に努める。
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