2023年5月24日
根室市は2022年度に、新型コロナから市中経済の回復を目的としたプレミアム付き商品券を発行する「市内消費喚起商品券発行事業」を実施
プレミアム付き商品券発行事業はこれまで何回か実施されていましたが、今回はじめて利用者・事業者側のアンケート等を含めた実施結果が今回はじめて公表されましたので、大変興味深く読ませていただきました
根室市が実施した令和4年度の事業では、50%のプレミア率で(10,000円の販売額で15,000円分の商品券を販売)25,000セットを販売
最終的な換金率は、
全店共通商品券(13,000円分)は、99.86%(324,559,500円)
飲食店限定商品券(2,000円分)は、98.02%(49,012,000円)
となったそうです
また市民アンケート結果から商品券を利用した消費総額が473,987,520円
そのうち普段購入している商品やサービス分を代替したと考えられる373,571,500円を差し引いた172,328,534円が市中の商店・飲食店等に波及した消費喚起効果であると、報告書では推計しています
私のところにもこのアンケートが来ていたので回答しましたが、正直言うとアンケートが届いたときには、もうあまり覚えていないので、おぼろげな記憶で回答していました
またアンケート回答率33.3%からの推計なので(というか、市内全世帯で12,153世帯を対象にした事業のうち、回答は333件)、どこまで正確なのかという疑問はありますが、それでも本事業による効果がどうであったのか、数値的に示されたことは大変興味深く思います
ところで、
ある意味当たり前なのですが、こうしたプレミアム付き商品券は小売り業…特に食料品等の購入に活用されることが多くなります
今回の実績でも、全店共通商品券では309百万円の換金のうち、202百万円(62.3%)が「酒・米・食料品小売」業種で使用されていました
また飲食店限定商品券では「寿司」30.2%、「喫茶店・レストラン」28.1、「ラーメン・そば」24.5%と利用される業種が偏っています
低所得者に限らず市民の消費生活を支えるための政策目的なら、どのような買い物や飲食で利用されようとも良いのでしょうが、
今回のプレミアム付き商品券発行事業の場合は、コロナ禍でダメージをうけた業種に対する支援という目的であり、アンケートの自由記載では、結果的に支援された業種が偏ってしまったのは政策目的に対してどうなのか、という趣旨の意見もありました
そのほかの課題として、中央資本の大型店で多く消費されたことについて、どのように判断をするのか、という課題もあるとは思います
ただしその一方で、商品券による家計の「余力」を他のサービス・消費に充当することが出来たのではないかという見方もできると思います
また今回の事業によって(推計)172百万円という金額が+αで市中に還流したこと自体が、全市的に経済効果を生んだと見ることもできます
手法としては、地元の個人商店等に限定することも等できるのでしょうが、制約を課すことは逆に消費者にとって使い勝手が悪くなることが予想されます
いずれにしても、今回の調査結果を拝見して、「経済活動の活性化」や「事業者支援」を目的としたプレミアム付き商品券発行事業の難しさをあらためて認識しました
それでも事業者側のアンケートでは、何らかの形で「効果があった」という回答が81.4%にのぼります(もちろんアンケート回収率が17.4%と低かったので、効果があると感じた事業者が積極的にアンケートに答えた可能性もありますが)
根室市は2023年度もプレミアム付き商品券発行事業を実施する計画を示しています
「次回の」目的は物価高騰に対する家計支援が主になるため、また評価や分析の視点は異なってくるのかもしれませんが、いずれにしても事業に対する効果測定の方法については、さらなる研究を進めて行く必要があるものと思いました