2021年3月28日日曜日

根室市の2021年度予算について(各事業・特別会計)①

2021年3月16日~18日の日程で、2021年度の根室市議会予算審査特別委員会(各事業・特別会計)が開催されました。その内容について、一部を報告します

港湾整備事業会計

港湾整備事業は2021年度予算では、特別大きな進展はありません。漁獲の深刻な低迷の中、水産上屋を含めた老朽施設の更新が、長年にわたる大きな課題です。
市は2019年度に根室港区側の1号水産上屋の更新にむけて基本設計を行いました。
衛生管理型の機能を有する施設として整備するために従来よりやや大型化する構想だそうですが、何よりも近年の人手不足などによる建設コストの増大によって1棟あたりの総工費が15億円程度にまで急上昇しています(7~8年前くらいは1棟を8億円程度と試算していたので倍近くに!)。
サンマをはじめとする近年の深刻な不漁により、港湾整備事業の収入のメインである漁獲物陸揚使用料が低迷しています。2019年度では輸入のウニが陸揚使用料のトップを占めました
今後についても水揚げ高の急激な回復に多くを期待できない中で、あらたな大規模工事に着手することに市としても二の足を踏んでいます。従来の水産庁の補助メニューだけでは港湾会計が立ち行かなくなる恐れがあり、現在は新たな補助制度の創設を国など要求している状態のまま止まっています。
ただそうはいっても、水産上屋の老朽化が進んでいることは間違いなく、また花咲港区側にも5棟ある水産上屋についても、順次計画的に対処をしていかなければならない状況です
根室港は漁港的な性質が強い重要港湾として、低迷する水産業を力強く下支えするために、今後の施設・機能整備のあり方をどのようにしていくのが、引き続き大きな課題となっています

水道事業会計

根室市は2019年4月から水道料金を値上げしたことにより、料金収入が大幅に改善しています。
2018年度と2019年度の比較では、給水収益は101百万円伸びています(その分の市民負担が増えたということです)
ところで基本的に人口減少で年々家事用の有収水量は減少していきますが、今年度はコロナ禍による外出自粛の影響によるものか、2020年度11月末時点の前年対比で1.9%増加しているそうです。
ただ長期的な見通しでは、2021年3月に市が策定した「根室市水道経営戦略」によると、10年後(2030年度)の有収水量は-16.6%減少する見込み(2019年度対比)となっています。
それによって経営的には、2029年度に4,473千円、2030年度では46,792千円の資金不足額が生じる見通しとなっています。
つまりこのままでは、8年以内に再び水道料金改定(値上げ)が予測されます
これは人口減と経済の縮小による有収水量の減少という根本問題だけでなく、老朽化施設の更新を含め、4億円~5億円規模の工事を毎年度行わなければならないためです
それだけ巨額の工事を継続しても、実際には老朽対策は追いついておらず、法定耐用年数(40年)を越える管路の割合である経年化率は、2018年度19%→2020年度末に25%程度まで伸びる見込みとなっています(その後は20%前後で推移する見込みです)

水道について、根室市は全国的に珍しく低所得者への減免制度をもっています
2019年度の値上げとあわせて、減免対象者を生保基準の1.1倍(減免率15%)の区分を創設しました(生保と生保基準以下の区分は減免率50%)
ところが制度の利用は、2019年度で1件(延べ12ヶ月分)、2020年度2月末で6件(延べ49ヶ月分)に留まっています。
制度が十分に広まっていない要因は様々にあると思いますが、今後のについて、減免の対象となる基準を生保の1.1倍からさらに引き上げていくことを検討する必要があると考えます。

前述の長期試算には、桂木浄水場の耐震化や大規模改修などの費用が含まれていません。
市水道ビジョンでは「2024年度までに水処理棟の更新方法を決定」する、としています。
その準備のために、市は2021年度から何年かかけて浄水場の耐震診断をはじめます。
それらの結果として、耐震工事が必要になるのか、又なんらかの改善工事が必要になってくるのか、現時点では不透明ですが、工事費が現在の見込みよりさらに膨らむ場合は、水道料金の見直しの時期が早まるおそれがあります。
これまで何度も指摘してきましたが、根本的には水道施設の更新に対する国の補助制度があまりにも手薄であるという大きな問題があります
国民の生命をまもるための大切なライフラインです。
あらため国に対して、これまで以上に強く制度の拡充を求めていく必要があります。
また、市の水道技術職の採用が困難な状況が続いています。
労務員を含めて、次年度は2名の欠員状態です。
公務員のため、給与や手当の水準を変えることは出来ませんが、技術の承継や来るべき災害・復興への対応のためにも、何らかの対策を早急にとっていく必要があります。

下水道事業会計

水道事業と同じく人口減と経済の縮小の中、以前のような収益性の高さは見込めませんが、「根室市下水道事業経営戦略」によると、10年後の2030年度までは、資金不足が生じない見通しとなっています
経営的に心配なのは、長寿命化計画にもとづいて終末処理場の整備を実施していますが、国の社会資本整備総合交付金が、希望する補助額が採択されないため、予定している工事が次々と先送りせざるを得ない状況が続いていることです
先送りを続けているために、再来年度(2022年度)には1,150百万円という莫大な工事の見込みとなっています。
ただ実際のところ、それすら国の補助がつくかどうかは、まったく不透明な状況です

病院事業会計

2020年の一般会計から病院への繰り出し金は1,757百万円(見込み)です。新病院建設後からずっと、ほぼ同じような水準の繰り出し金(15~18億円)を必要としています。
特に新型コロナの問題から、病棟の空床確保のため入院患者の制限、また外来では受診控えや受診間隔を長期間化させたこと、また支出面では感染予防や人工呼吸器をはじめ新たな医療器材の整備等を行うなど、新年度においても収支改善に向けて大変に苦しい状況がつづくものと考えられます
なお2020年度はコロナの空床確保分をふくめ国等からの補助金が265,308千円入りました。新年度は国など補助金の動向が不透明なため、当初予算の段階で特別減収対策企業債を284,300千円計上しています。

地域医療として不採算部門を担う公立病院である以上、一定の税金投入は絶対に必要です。
問題は、市の一般会計がどこまでこの水準の繰出金を保つことが出来るのか、という点です
2021年度は全国から頂いたふるさと応援寄付金が好調だったこともあり、「ふるさと応援地域医療安定化基金」から13億円繰り入れて賄うことができました
昨年秋頃の当初予算編成時点では市の一般会計が約12億円の財源不足だったことを考えると、病院への繰出金の財源ねん出が非常に困難だったとみることができます
ふるさと応援地域医療安定化基金の残額は14億円あり、たしかに2022年度も同額を繰り出すことは可能です。でも2023年度については、当然ながらふるさと納税は将来の財源を保障するものでないため、何の保障もありません。
あらためてこうした問題について、院内での論議を深めることはもちろんのこと、市民的にも十分な情報公開のもとに将来的な地域医療のあり方について、検討を進めていく必要があると思います

まずは毎年、少しづつでも収支を改善させるための取り組みを進めていくしかありません。
2020年度の見込みでは医業収益に対する給与費の比率は90%を超えています。経営としては極めて深刻なレベルです。ただ人件費の問題は病院としての医療機能に直結します。したがって将来的な「地域医療をどうしていくのか」という問題と一体のものとして考える必要があります。

その他の経費について、いろいろな課題はあるかと思いますが、今回の予算委員会では、橋本は病院の「企業債償還金」の問題を取り上げました。
新病院建設後も医療器具整備のために毎年、数千万円におよぶ起債借り入れを続けています。特に2019年度からは1億円以上になっています。
その企業債の償還額は年間約2億円近くになっています。新病院の建設工事費に要した起債を含めた償還ピークは2017年度の299百万円でした。
今後も同じ水準で医療機器の更新を続けていけば、それに近い償還額になります。ましてや後は新病院建設時に導入したCTやMRIなど大型機器の更新も必要になってきます。
参考までに医療機器整備のため2012年度に借入した7億円は、1年据え置き5年償還という短い償還期間のため、2014年度~2017年度でこの分だけでも単年度176,350千円の償還となっています。
自治体病院として、あるいは地域医療として求める医療水準と経済性のバランスをどのようにとっていくか。
専門的な話で、また病院内の現場の実情を踏まえた深い理解が必要な問題であり、あらためて院内でしっかりと論議を深めるよう求めました。

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