なお根室市の水道問題に関するこれまで私たちの見解は以下をご覧ください。
(日本共産党根室市議会議員団「市議団ニュース№1866」参照
-PDFファイル-)
今回の改正は、2019年4月から料金改定率で平均14.8%引き上げる内容です。
この改定により根室市の水道料金による収入(給水収益)は2019年度、84,931千円の増収になることを見込んでいます。つまりその分だけ、各家庭や事業所などの水道代が増えることになります。具体的に言えば、口径13㍉の水道管が入っている一般家庭で20t使った場合の水道料金は、これまで4,160円だったものが4,890円となり、730円の値上げです(税別)。
もともと高いとされてきた根室市の水道料金。例えば家事用の料金の高さで比較すると、20tあたり全道35市の中で上から9番目の高さだったのが、今度は3番目に高くなります(10tあたりだと全道2位に!)
1981年(昭和56年)に約3割程度の水道料金の大幅な値上げを行って以来の改定です。この間に他の町では水道料金の値上げを次々と行ってきています。釧路市も今年、約19%程度の値上げを実施しました。
今回の料金改定は2019年度から2023年度の5か年間を想定しています。したがって2024年度を前に再びこの水道料金をどうするのか、という総合的な議論がなされるものと思います。
今回の改定は単純に料金を引き上げただけでなく、さまざまな変更点があります。
①料金体系を「用途別」と「口径別」の併用型に変更した。
②基本水量を伴う基本料金と超過料金から基本料金と水量料金に変更した。
③口径別のメーター使用料を撤廃し、基本料金の中に組み入れた。
④用途別区分のうち「団体用」と「営業用」という区分を無くして、新しく「業務用」という区分に統一した。
⑤用途別区分に「営農用」を新設した。
⑥一般会計からの繰り入れを実施して、水道料金の値上げ幅を抑えた(平均21.5%の引き上げ⇒14.8%の引き上げに)。
⑦500t以上の水量料金を新設して、多量消費者の料金上昇を抑制した。
というのが大きな変更点です。
①これまでの「用途別」の料金算定方式に、「口径別」料金算定をミックスした方式を採用しました。「用途別」は家事用、営業用など目的ごとに料金算定区分が異なる方式です。根室市はこれまでこの方式で料金算定してきました。
しかし現在は多くのまちで「口径別」の料金体系を採用しているそうです(口径別を採用している事業体数は、2016年4月時点で全国の57%を占める)。
料金体系としては明確なため、根室市でも導入を検討してきたようですが、上下水道事業の運営委員会の論議で、市民側としては口径別という料金体系になじみが薄い等の理由から、双方の料金体系を併用する方式となったようです。
②これまである一定の使用水量までを基本料金(基本水量付きの基本料金)とし、それ以上を超過料金とする二部料金制をとってきました。しかし来年4月から、基本料金と水の使用量を1t単位から算定する水量料金の二部料金制となります。水の使用料が増えれば、それだけ料金が高くつく算定方式です。
③省略
※ここまでを具体的に当てはめてみると13㍉水道管、家事用、20t使用の場合、
④省略
⑤酪農など農業者のところは、落石・厚床地区は農業用水として別な事業会計となっています。それ以外の地域は市水道事業の「営業用」の用途区分で算定していました。今回の改定では農業用水の地区と整合性をとるために、新設された「営農用」という料金はこれまでの料金とほぼ同じくなるように据え置かれています。つまり同じ市内にある農業なのに農業用水の管理地域と上水道事業の管理地域で、水道料金に大きな差が出ないように配慮したものです。また「運営委員会」では、今後かんがい排水事業や大規模化により多量に水を使用することなどから、参加する委員から意見が上がっていました。
なおこの点について、議会で保坂議員が「整合性をとるなら、農業用水と協議して農水の方を値上げすることが、他の市民負担との公平性が保たれるのではないか」という趣旨の発言をしていました。確かにこうした疑問・意見に対して今後、市側も丁寧な説明をしていくことが必要と思います。
⑥繰り返しになりますが、すでに何年もの間、根室市の水道は「赤字」の状態が続いていました。その資金不足をこれまでの貯蓄のようなもの(内部留保資金)を取り崩して、充てていました。
民間の会社と違って、公営企業が簡単に倒産しないのは、赤字であっても企業債や一時借入金などで銀行などがお金を貸してくれるからです。しかし、国のルールではこの資金不足が一定の割合を超えると、企業債の発行に制限がかかり、また事業会計を立て直すための「財政再建化計画」の策定が必要になります。当然ながら、その計画を策定し実行するには大幅な料金の引き上げが避けられないでしょう。
さて、今後の市水道事業会計の見通しです。市の試算によると、
表の上段のように来年度から、1億円を超える単年度の資金不足が生じ、累積債務が膨らんでいく見通しでした。なお下段は14.8%引き上げた料金改定後の財政試算です。
市はこの会計の収支バランスをとるために、当初は、給水収益を21.5%引き上げる水道料金設定で試算をしていました。
しかし、我々も従来から主張してきましたが、本来、命をまもるために欠かせない水道は重要なインフラとして国がその財政的な責任を果たすべきです。
市の説明によると現在根室市の管路(配水管・導水管・送水管)の総延長411㎞のうち、法定耐用年数(40年)を超える水道管は12%にのぼるそうです。その管路を含む水道施設を法定耐用年数で更新するには、毎年6.8億円ほどかかる計算とのことです。しかし、現在市が長期試算で見積もっている建設改良費は5億円程度しかありません。工事を先延ばししているためで、当然ながら、老朽管の割合はどんどん増えていくものと考えられます。また将来的には桂木浄水場の更新という大きな事業も控えています
根室のみならず、全国各地で老朽管など水道施設の更新は大きな課題となっています。しかし、それに対する国の補助はほとんどありません。仮に5億円の工事費用の1/3でも国の補助があったなら、今回のような大きな料金改定は必要なかったものとわれわれは考えています。国の対策として、現在国会で法改正が議論されていますが、民営化や広域化を推し進めるだけの、まるで他人事のような対応です。
どのような過疎地域、あるいは水資源を確保することが困難な地域に住んでいようとも、そこに暮らす住民の命の平等が保たれるように、国に強くその対応を求めていく必要があります。
ただし、そうは言ってもすぐに国の方針が大きく変わるとは楽観視できません。では国が対応しなければ、すべて「受益者負担」という考え方によって、水道料金として転嫁すべきなのでしょうか。本筋はそうですが、市民負担増にも限界があります。
近年の不漁など厳しい市中経済の状況や市民生活への大きな影響を勘案し、市の一般会計が相応の負担をすべき段階に来ていると考えます。
今年4月に提出された「運営委員会」の答申では、「他会計からの資金調達等を検討し、市民負担の軽減を図ることが適当」と指摘されています。
そうした結果、今回の改定では、当初の給水収益を21.5%引き上げる料金改定から、14.8%に引き下げ、その差額分を一般会計から繰り入れる措置がされました。金額にして年間約40百万円の支出です。この対応も5年間の暫定的なもので、2024年度を前に再度の検証と議論が必要になります。
40百万円の繰り入れですが、これほど全国からたくさんの「ふるさと応援寄付金」を頂きながらも、一般会計が実質的に赤字で毎年度基金を取り崩しており、その基金も枯渇の危機に瀕しているなかにあって、決して少ない金額ではありません。毎年度、市立根室病院に繰り入れている莫大な繰入金を、そのうち少しでも水道に回せるようになれば、話は違いますが。
なお今回の議会では、一般会計からの繰り入れは本料金の設定を再改定するのではなく、補助金のような形で支給するべきでないか、という意見もだされていました。
例えば低所得者等に対する水道料金の減免はそのような仕組みとなっています。本料金設定はそのままで、対象者に対して算出した料金を50%軽減しています。その差額は一般会計が補助金として拠出します。結果としてどちらの方式が良いのかは、今後あらためて議論の余地があるとは思います。
ただ今回の場合、一般会計からの繰入金は家事用をはじめ全ての区分における料金上昇を抑制するために使われています。それらを網羅する補助金制度は相当に複雑なものになると考えられます。また条例を改正する料金改定と違って、補助金は毎年度の予算対応ですから、その時々の「政策判断」に左右され、議会の充分な審議を経ないまま改変されていくことも懸念します。
これらの状況を踏まえた中で、今回、日本共産党根室市議会議員団としては、水道料金の値上げ条例に賛成しました
会計を安定的に維持していくためには、やむを得ないとはいえ、間違いなく市民の生活と生業にとっては大きな負担です。
しかし独立採算では限界があります。前述のように、われわれとしても政府に対し、今後もしっかりと対策の強化を求めていきたいと思います。
また、市議団としては、これまでも市の水道の現状について市民に広く周知していくよう求めてきました。行政は「ねむろのみず」を発行し、広報に織り込むなどの対応をおこなってきましたが、市民の理解は十分に深まっているとは言えず、その周知だけは決して十分ではありません。これからの丁寧な説明が求められるものと考えます。
あわせて低所得者対策の減免制度ですが、対象が生活保護基準以下とされており、制度の対象世帯が極めて限定的となっています。10月から生活保護費の引き下げとなり、ますますその制度から対象者が遠のく恐れがあります。これらに対する拡充も必要です。